初めまして、さいのすと申します。
ぼくはインターネットの片隅で何だかよくわからない本やコンテンツを制作するインターネット狂人です。どのくらいの狂人かというと、ケツ割り箸についてのアンソロジーを同人誌として作ったり、道で酒を飲んでるおっさんたちの写真集を作ったりしているレベルです。
どちらもこちらで委託販売しておりますので是非興味を持った方はご覧ください。
ここからはぼくのいつもの文体で行こう。
ぼくは、制作物から見てわかる通りダメ人間だ。友人との約束は打率5割で遅刻する。これが野球ならイチローなど目じゃない打率だ。ダメ人間すぎて仕事も続かない。
よーし仕事をしよう!と転職するたびに精神的に故障したりそもそも転職先の会社がやべー会社だったりで職歴だけが増えていく。
職歴の数がTポイントに換算されるなら恐らく富士そばのざる大くらい食べられるんじゃないだろうか。
せめてなんとか普通の生活を送りたい。でも努力やお金がかかることはしたくない。そんなときぼくは閃いた。
そうだ、神様にお願いしよう。
日本の神様は非常に懐が深い
日本は八百万の神、という言葉の通り様々な神様を祀った神社やお寺が各地に存在している。
東京都には神社仏閣は約4300か所あり、首都圏近郊まで広げると約18000もの神社仏閣があるのだ。18000人も神様や仏様がいるならこんなダメなぼくに大金などを授けてくれる神様も一人くらいはいるのではないだろうか。
ただ、ここで引っかかることがある。
ぼくは毎年お正月に神田明神にお参りしている。
厄年を迎えたときは厄払いもしている。そのおかげで大きなケガや病気はせずに何とか1年過ごしているが、今のところものすごい宝くじの大当たりが当たったことはまだない。
祈るときも「とにかく1000億円欲しい」と横でお祈りしている人がドン引きするくらい祈っているが、今のところ1000億円は手に入っていない。
厄年に死にかけたりしていないのでご利益がないというわけではないと思うが、神田明神は正月になると初詣に数万人の人が来るのだ。
恐らく神様も「死なない」「厄年何とか生きられるようにする」等の優先度が高い願いから処理するので、「1000億円欲しい」などの叶えなくても死なないレベルの願いはやはり後回しになるのではないかと思う。
このようなメジャーな神社仏閣は霊験もあらたかだと思うがもしかしたら一人当たりの神様の使える力も限られているかもしれない。
そう思うと「死なない」という願いを叶えてくれているだけありがたい話だ。
だが今回は神頼みして楽していいことが起きるように願うのがテーマなので、マイナーな神社仏閣にお参りするほうがもしかしたら効果があるのではないだろうかとぼくは考えた。競馬で言うところの穴馬に望みをかける感じだ。
競争率が低そうなニッチな神社を参拝してみよう。
ぼくはインターネット集合知で様々な神社を調べて都内へ繰り出した。
神様に倍率や競争率があるのかわからないけれども、余り知られていない神様にご挨拶したら普段起きないような良いことがあるかもしれない。
大井町から蔵王権現神社を経由
大井町にある東光寺は、トイレの神様が祀られているレアなお寺だ。
祀られている場所にまたがることで下半身の病気から守ってくれるご利益があるらしい。ぼくは15年ほど痔に悩まされているので非常にご利益に期待ができる。
まずはここで一つ尻の悩みをズバッと解決してもらいたい。
そんなぼくは意気揚々と大井町へ向かった。
大井町近辺には東光寺のほかにもいくつか神社がある。
大井町の駅のすぐ近くにある蔵王権現神社もその一つだ。名前の通り蔵王権現を祀った神社である。
ぼくは蔵王権現についてはアトラスから発売されていた「真・女神転生」というゲームで知ったわけだが、なんとこの神様は釈迦如来・弥勒菩薩・千手観音の3人の神様が合体した神様なのだ。
簡単に言うと悟空とベジータと悟飯が3人でフュージョンしたような神様でとにかくすごい神様なのだ。
後で調べてみるとこの大井町にある大井蔵王権現神社はめちゃくちゃ歴史が古く、一説には平安時代からある神社らしい。
しかし、この神社にはそんなことを微塵も感じさせない親しみやすさがある。
さすがスーパーサイヤ人3人によるフュージョンは格が違う。
もちろんいろんな神様にお願いするほうがご利益があると思ったのでバッチリお参りした。
そして東光寺へ
道すがらに蔵王権現様にお参りしたが、本題は東光寺だ。
場所は大井町から徒歩10分ほどで、隣の下神明駅からも近いとあり、そのままてくてくとGoogleマップを片手に歩いていく。が。
「これどこから入るんだ…?」
地図上では確かにこのあたりのはずなのだが、見渡す限り住宅や商店が立ち並びおよそ寺があるようには見えない。それらしい曲がり角があり喜び勇んで曲がってみたら明らかに誰かの家の倉庫かなんかにつながっている。
若干心がくじけそうになりつつも、道がないため裏側に回ろうとしたら。
あった。
本当に唐突に看板が現れた。Googleマップで指示された場所と全く違うところに入口があったのだ。地図を確認してもここに道があるようには書いていないが、看板があるということは恐らくここが入り口であろう。
きれいに石畳で舗装された歩道が唐突に広がっている。おそらくこの寺のご利益からこんなきれいな石畳が出来上がったに違いない。
ぼくの肛門も美しい石畳のようにきれいに痔が治るかもしれない。
期待が非常に高まる。
関係ないが明らかに寺の敷地と見える位置に床屋があり、何だか異世界のようである。
寺の敷地入口には戦没者慰霊碑とともに軍馬と軍用犬の慰霊碑がある。
歴史の広さを感じるが軍用犬って何していたんだろうと調べたところ、伝令や警備に従事したり、戦闘時の攻撃をしたりなどかなり多種多様な仕事をしていた。
特に警備や伝令は第二次世界大戦末期まで利用されており、シェパードなどが従事していたそうだ。犬の方がぼくよりもはるかに高度な仕事をしている気がする。
門をくぐって境内に入りすぐ右手を見ると、お目当ての烏枢沙摩明王をお祭りしている東司があった。
要するにトイレだ。
まさにトイレの神様だ。
どうやらこのトイレの中にある便器にまたがり祈ることでトイレの神様のご利益があり、下の病気にかからないという。
またがるということはぼくの痔にダイレクトアタックするに違いない。ものすごい効果がありそうだ。
ウキウキしながらぼくは東司の扉に手をかけた。
ガシャッ
「えっ」
扉に手をかけるが、全く開かない。完全に鍵がかかっている。
もしかしたらお参りの際にはお寺の人に声をかけなければいけないのだろうか。そう思って境内を見渡した。
人っ子一人いない。
何なら本堂もすべて戸締りされている。訪れたのは日曜だったが、日曜は寺も休みなのだろうか。
烏枢沙摩明王を拝むことができず、しょんぼりしたぼくはそれでもとりあえず戸締りされている本堂前の賽銭箱に小銭を入れてお祈りしたのだった。
いろんな神様にお参りしようと思ったのだがいきなり初手から躓いている。
自分のダメ人間さがこんな形で発揮されるとはさすがのぼくも考えていなかったが、まだほかにもいろんな神様がいる。
折れかけた心を何とか奮い立たせ、次の神様の元に向かうのであった。
つづく。
文: さいのす(@sainoswww)
編集:渡良瀬ニュータウン(@cqhack)