眠らなきゃいけないのに眠れない人のための文章

寝ないとからだがバグる

もともとそういう性質だったのだけれど、一人暮らしをはじめてから幼児用ビニールプールと同じくらい眠りが浅くなった。ぼくの家は高速道路の隣に建っており、部屋には車のエンジン音がひねもす鳴り響いている。右翼の街宣車が軍歌を流しながら走りさってゆくので、「同期の桜」や「軍艦マーチ」が目覚ましのアラーム音になることも多い。

途切れ途切れの睡眠、起床、家事、出勤、退勤、家事、就寝、途切れ途切れの睡眠、軍歌、起床、家事……そういう生活を四ヶ月ほど続けていたら、九月の中頃に無事体調がおバグり申し上げた。目眩と耳鳴り、浮遊感に悩まされ、耳鼻科やらメンタルクリニックやらに行って「生活が雑なのでもっといい感じにしましょう」といった旨の診断結果が下された(ちなみに診断結果自体は自律神経失調症です)。

とにもかくにも睡眠の改善だ。ぼくは一日八時間以上眠らないとダメなタイプの人間だと周囲に言いふらしていたのだけれど、どうやらそうではないらしい。自分の睡眠をよくよく見つめ直したところ、どうやら「八時間以上眠る」ことそれ自体が最も重要ということではないらしいということに気付くことができた。重要なのは以下の式だ。

睡眠の質×睡眠時間=回復量

ぼくは今まで「八時間以上眠れない日が続くと何事もうまくいかなくなり、最終的には体が爆発して死ぬ」と思い込んでいたのだけれど、それは「睡眠の質」を改善せずに「睡眠時間をとにかく長くする」ことで回復をまかない、日々をなんとかやってきていたからだ。改めて考えてみると、睡眠時間は有限かつ日々の状況に左右される。心身を回復させるために睡眠時間よりも重要で係数が大きいのは、睡眠の質だ。

「眠らなくてもいけちゃう」系の人たちは一定数存在する。ぼくの周りにも何人かいる。けれど、そういう人たちは防御力が高かったり、自動再生スキルが付いていたり、体力オバケだったりして再現性が低い。ぼくたちのステータス欄には常に「どく」の記載があり、人と話したり洗い物をしたりするだけでHPがガンガン減ってしまうことを肝に銘じて、そういう人たちの言うことを信じるのはいったんやめておいた方がいいと思う。

だいたい、三時間睡眠で有名なナポレオンですら「実は毎日7時間+昼寝までしてスヤスヤ寝てました」みたいな説が出てきているのに、ほんとに「眠らなくてもいけちゃう」ものなのだろうか。「いけちゃう系の人種」を前にすると、いやそんなこと言って実は恋人にジェラピケの寝衣でもプレゼントしてメチャメチャ寝てるんだろどうせよお、といつも思っている。

そういうわけで、睡眠の質を高めるためにやってみたことを効果の高かった順に記載していく。書くのが遅れたのだけれど、これまでの文章もこれからの文章もあくまで自分にとっての見解で、お医者さんが言っていることではない、ということを悪しからずご了承ください。

睡眠の質を高めるためにやったこと

・耳栓

以前は一、二時間ごとに目が覚めてしまい、再入眠するまでに時間がかかったり、お酒を飲んで完全に覚醒してしまったからだと意識を強制的にシャットダウンさせていたのだけれど、耳栓を付けるようになってからは連続四時間以上の熟睡ができるようになった。

ちなみに、眠るための飲酒はやめた方がいい。帆柱のてっぺんに横たわるような酩酊は睡眠時間を長くするけれど、睡眠の質を極端に下げる。あと遅刻のリスクが上がる。お酒で遅刻、ヤバいのでやめましょう。

・入浴

「温めた水の中にからだを沈めるだけで疲れが和らぎ睡眠の質が上がる」と気付いてからは週に一回は家の浴槽に湯を張り、時間に余裕があれば銭湯に行くようにしている。

こんな感じのことを考えながら入っている。これはよく言われていることだけれど、お風呂は水風呂(あるいは冷たいシャワー)で終えた方がいい。温まったままの状態で外に出てしまうと汗をかいてしまって結局からだの芯が冷える。芯だけ温まった状態を作り出すために、お風呂の最後にからだの表面を水に晒しておくと、髪を乾かしてそのまま布団へ! といった時でも快適な睡眠が摂れる(ような気がする)。

・蒸気アイマスク

使い捨てのものを使い続けるのはコストが厳しいので、こんな感じの目元マッサージャーを便宜的に「蒸気アイマスク」と呼んで使用している。

目元に圧迫感・違和感があり、寝返りも打てないので装着したままは眠れないが、Daftpunkみたいでかっこいいので時々就寝前に付けている。睡眠の質を高める一助になっているかどうかは不明。

眠れないことよりも眠れなくて焦ることのほうがきつい

布団に入っても寝付けない。明日からやらなければいけないこと、過去にやらなければいけなかったこと、ゲル状の不安が凝着と分離を繰り返しながら頭の内側を這いずりまわる。「今から眠ってもあと◯時間しか寝られない」と睡眠時間の計算を繰り返しても、睡魔は訪れない。ヤバい、ちょっとでも寝たい、と焦れば焦るほど目は冴え、遮光カーテンの向こう側が少しづつ明るみはじめる……

どれだけ努力しても眠れない時は眠れない。ぼくはまだ眠れない時用の具体的なハックはまだ見つけられていないのだけれど、最近は開き直って布団から出て入眠を諦めてしまう。無理やりにでも眠ればからだは回復するが、無理やり眠ろうとすると、こころが疲れてしまうからだ。

起きてしまってやるべきことを先に終わらせてしまうのも一つの手だと思う。ぼくが勤めている会社の定時は9時-18時で、たいてい20時~22時、遅くて終電くらいまで働いているのだけれど、眠れないときは朝6時に出社して18時に即帰宅するようにしている。業務時間を前倒しするようなイメージだ。

眠れない時は眠れないなりになんとかすればいいと思う。なんとかする方法を一緒に考えられたらいいとも思う。冬の夜はすてきだし、夜を更かすにはうってつけだ。どうせSNSは静まりかえっているから、スマートフォンはベッドのそばに置いたままにしておくのがいいですね。

文:渡良瀬ニュータウン(@cqhack)

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