道に迷いすぎてメンタルクリニックに行かないようにするための迷子戦略

日常生活の中で最も絶望的なできごとは、道に迷うことなんじゃないか。地図が読めないタイプの人間なので、しばしばそう思う。

大学3年生の頃、自宅から自転車で30分ほどの最寄駅に行く道ですら、10回以上迷子になったことがある。さすがに頭の調子を疑ってメンタルクリニックにかかった。

「風邪気味だから内科に行く」みたいなノリで行ったのがまずかったのか、問診票を見た医師の対応はそっけないものだった。というか、雑だった。

「あなたここの出身じゃないんでしょう? ここの人とは土地勘や性質が違うんですよ。一応検査受けときます? たぶん何もないと思うけど」

「もうちょっと優しく言ってくれてもよくないですか?」とは言えず、検査を断りすごすごと引き下がった。

4年間過ごした地方都市でさえそうなのだから、就活で東京へ通いつめていた時期はさらにひどかった。週に3回くらいの頻度で心をぼろぼろにされていた。

居並ぶビル群がどれも同じように見えて、一向に御社へたどりつけない。説明会に間に合わなかったときは、交通費の高さを呪いながら泣いた。

道に迷うと遅刻するのはもちろん、焦り、自己嫌悪、疲労などなどによってメンタルを非常に残念にする。具体的に言うとこの世のすべてを破壊したくなってしまう。これではいけない。不機嫌な迷子なんてみじめすぎる。

 

 

「迷子を演じているだけ」だと思い込もう

まずは道に迷わないように、事前に道を調べたり、スマホのバッテリーやポケットWi-Fiを持ち歩いたりするべきだろう。けれど、そのくらいで改善される程度の迷子ばかりではないはず。マップアプリで経路検索して5分の距離を1時間迷ってしまうようなハイレベル迷子は、どんなツールに頼ろうがだめなときはだめなのだ。

迷わないように努力するより、むしろ「絶対に迷う」と確信を持っておいた方がいい。仮に迷わなかったら自分を誉め称えればいいし、案の定迷ったときは「ああハイハイ、いつものことね」と平常心を保つことができる。

加えて、迷ってしまったときのみじめな気持ちを回避する工夫のひとつとして、「いま迷っているこの状態は映画のワンシーンだと思い込むこと」を提案したい。頭の中でお気に入りのBGMを流し、歩調をゆるめ、好きな俳優や女優を思い浮かべる。彼らになりきってもいいし、共演しているつもりでもいい。

次の角を曲がったら、ばったり重要人物に出くわしてストーリーが進むかもしれない。うっかり壁の凹凸に触れて隠し通路が開き、近道が見つかるかもしれない。思いもよらぬハッピーの前に苦難はつきもの、いまは物語を盛り上げるために必要な「迷うシーン」なのだ。
そう思い込めば不思議と心は落ち着くし、不快な汗や迫る時間も演出上 必要なものだと割り切ってしまえる。

 

 

ちょっとしたポイントでハッピーな迷子ライフを

映画の中だと思い込むのが難しければ、スマホのカメラを起動して、歩く足元を画面越しに見てみるといい。
現実感がほどよく薄れてフィクションっぽい気分に浸れる。

ときどき意味もなくドラマチックに振り返ってみたり立ち止まったり、脳内で「まさか…」とか「どうして?」とかの字幕をつけてみても楽しい。

ここで大事なことは、あまり悲壮な映画にはしないこと。現実がすでに悲壮なので、想像の中でも自分を追い詰めてはかわいそうだ。そしてBGMは、自分の歩くテンポに合うものを選ぶこと。私ならきのこ帝国の『クロノスタシス』がぴったりなのだけど、きっとそれぞれあるはずだから、ぜひマイベスト迷子ソングを考えてみてほしい。

世界中の迷子が、少しでもハッピーな気持ちで迷えますように。

 

文:カレン(@bdlakr1)

編集:渡良瀬ニュータウン(@cqhack)

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